ワルクマ

荒涼としたワンダーランド王国。人の姿はなく、風化してしまったワンダーランド城だけが遺跡のようにポツンと建っている。城の裏にあるドリクマの祠。内部は暗く静まっている。内壁には、ビッシリと機械がはりついていた。バチバチバチと電気がショートするような音と共に、青い光が発光していた。外の世界とは真逆の、機械に埋め尽くされた祠の中心には、不気味なワルクマが鎮座している。表と裏を繋ぐ祠。場面は一転して。ワルクマに支配されている国。国の力の源、ウタウタを独占しているワルクマ。神として祀られている。ウタウタの力を源にして機械化された国。ワンダーランド王国と、うりふたつのパラレルワールド。機械が無機質に動き、インダストリアルな城が不気味に輝く。空には巨大なワルクマの形が、金環状に浮かんでいた。それは、ブラックムーンと呼ばれ、完全に太陽の動きと同期して陽を遮っているため、日中でも薄暗い。

貴重なウタウタの力は、ほとんどがブラックムーンの稼働に使われていた。螺旋の塔の先端部から天高く吸い上げられるウタウタたち。「歌は悪である」ウタウタを独占するべく、音楽を禁じられた国。新しいウタウタを生み出す音楽は悪とされていた。もうずっと前から、曇りと雨の日しかない。人々は、青空を見た事がない。ATTACK UとCHANCE RAは、新しいウタウタで、独占されているウタウタの価値をなくし、ワルクマの支配から、音楽で人々を解放したいと考えていた。ワルクマが独占しているウタウタが人々を幸せにできる事、ウタウタは音楽によって生み出せる事をATTACK UとCHANCE RAは知っていた。考古学が趣味のCHANCE RAは、昔からそばにあった古い書物”ムカリドノシタワ”を読み解いて、それを理解していたからだ。仲間はヘッドホンをしていた。音楽を象徴するヘッドホンはアイコンのようなものだった。組織以外の仲間にはS+AKSの4人がいた。かつては国の秩序を保つ規律部の精鋭としてATTACK UとCHANCE RAを監視する側であったが、地下ライヴでウタウタのパワーに触れるうち、まだ少し残っていた人の心が反応した。それから行動を共にしている。規律部全員と同じく、思考や行動をコントロール出来るヘッドスコープを装着されていた。人を機械化するような装置だが、チップを改造済の為、コントロール機能はすでに外れていた。

サイレンが鳴り響き、サーチライトが動き回る街。とある不法ライヴハウス。鉄の無骨なドアが勢いよく開く。「不法ウタウタ容疑だ!動くな!」ワルクマを彷彿とさせるヘルメットの規律部。マシンのように冷徹な規律隊長も同行している。ヘッドスコープからの無機質な目線。スコープのフォーカスがジリジリと動く音。間一髪2人は裏口から街へ。入り組んだ街を走るATTACK UとCHANCE RA。水溜まりの水を跳ね上げる足元。ハアハアと息が切れる。追いかける、規律部。とっさに路地に隠れて、やり過ごす2人。走り去る規律部。「あぶなかったな、今捕まるわけにはいかないよな」通りをうかがいながら、話を聞いていない様子のCHANCE RAに続けた。「ホントにやるんだな、やめるなら今だぞ」ATTACK Uの言葉に、睨むような目線を送るCHANCE RA。「わかってるよ、音楽禁止なんて全くフザケてる!祭りで、本当のウタウタの力をみんなに見せてやろうぜ!準備は出来てるんだ、みてろワルクマ」雨が降り続く街。城前に詰めかける国民。

ATTACK U

CHANCE RA

うやうやしく祀られるワルクマ。相変わらずの不気味な曇天。巨大な鉄製ウタウタモニュメント。かがり火が焚かれ、規律部が隊列を作る。壮大な雰囲気。規律部のトランシーバー音。「城内に侵入者!裏門から、螺旋の塔に向かっている模様」螺旋の塔を駆け上がる2人。迫る規律部。ATTACK UとCHANCE RAの盾になる、S+AKS。螺旋の塔を駆け上がるATTACK UとCHANCE RA。螺旋の塔の出口。CHANCE RAがマイクを手にすると、祭りの会場に、ブィ〜ンと振動音が流れる。ハッと振り返る、規律部。流れる雲、不気味なワルクマの顔。揺れるかがり火。「いくぞ!」出口の扉を開けるATTACK U。顔を上げるCHANCE RA。ふたりの顔に外光が差し込む。